平成21年度研究計画に沿って実験を行い、癌抑制遺伝子BAP1の癌抑制機能解析を行った。 平成20年度にBAP1/BRCA1/BARD1の3つのタンパク質の結合状態を確認するためBAP1、BARD1、BRCA1の単体及びBRCAIとBARD1のヘテロダイマー状態の組み替えタンパクを作成し、SPRにて結合状態を解析した。その結果BAP1とBARD1が特異的に結合することが確認された。また、BAP1がBRCA1/BARD生ヘテロダイマーに対して干渉し、BRCA1/BARD1の結合を阻害することも確認できた。この事からBRCA1/BARD1のE3活性を結合するだけで阻害していることが解明された。次にBAP1の脱ユビキチン化活性について検討を行ったところBAP1がBRCA1/BARD1の自己ユビキチン化に対して脱ユビキチン化反応していることが明らかになった。以上の事から、BAP1が2通りの方法でBRCA1/BARD1のユビキチン化活性を抑制している事が明らかとなった。 当初、研究代表者はBAP1の脱ユビキチン化はユビキチン鎖の形態によって選択的に脱ユビキチン化し、プロテオソームを介した分解シグナルであるK48経由のユビキチン鎖のみ分解し、その為にBAP1存在下でBRCA1の安定化に繋がるものと考えていた。 しかしながらBAP1がBRCA1/BARD1の結合阻害をすることからBAPIとBRCA1の2つのタンパク質での直接の関係がBRCA1の安定化に関与しない事が示唆された。この事からBAP1の別経路での役割、別基質を同定することがBRCA1の安定化を解明する上で必須となりプロテオミクスの手法を用いて検討を行った。結果、多数のタンパク質とBAP1が結合する事が明らかとなった。この事から各タンパク質とBAP1の結合状態とBRCA1の関係を明らかにすることがBRCA1の安定化を解明する上で必須となった。
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