本研究は、幹細胞から制御性樹状細胞への分化誘導を中心とした再生医学を、移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療等の医療への応用に向けた戦略を達成するための基礎研究として進めている。免疫制御性樹状細胞を用いることにより、臓器移植後の免疫抑制剤の使用を限りなくゼロにし、安全かつ患者の生活の質(QOL)を向上させる移植医療の展開をめざしている。 本年度は、まず制御性樹状細胞への分化誘導法確立のため、マウスES細胞から樹状細胞(ES-DC)への分化誘導方法の確立を試みた。マウスES細胞株をフィーダー細胞であるOP9細胞と共培養し、血球系細胞(ES-DC前駆細胞)へ分化誘導し、GM-CSFを添加して未成熟なES-DCへ分化させた。さらに、IL4、TNFα、LPSを添加することにより、の誘導を試みた。 上記により得られたES-DCの細胞形態の観察、FACSによる細胞表面分子発現の確認、免疫制御機能およびその作用機序については、混合リンパ球反応(MLR)を行った。その結果、抗原提示分子であるIaおよびCD80、CD11cの発現が確認された。またMLRにおいてリンパ球の増殖反応が認められたことにより、抗原提示能を有していることが認められた。これらの結果より、 ES細胞を用いたES-DCへの分化誘導方法が確立された。 また、成熟、未熟および制御性DCへの分化誘導方法を確立するために、抗原提示細胞特異的に発現するプロモーター(MHCII)によりGFPを発現するレンチウイルスベクターの構築を行った。 今後はこれを用いて遺伝子導入を行い、ES-DCおよび制御性DCの解析を試みる予定である。さらに、移植動物モデルにおける免疫細胞療法の実施へと繋げていきたいと考えている。
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