リンパ管腫の嚢胞内皮細胞においては増殖因子受容体としてVEGFR-2及び-3の発現の上昇が報告されており、下流にあたるMAPK、PI3K/AKT経路の活性化が予想される。前年に引き続きこれらの活性化の度合いを正常組織のリンパ管内皮における発現を免疫染色にて比較検討した。本年度あらたにリンパ管腫由来細胞株を得、それらを免疫不全NOGマウスに移植した結果、リンパ管腫様組織を作ることが確認された。計7検体全例につき同様の結果を確認できているが、一方市販の正常リンパ管内皮の移植ではリンパ管腫様組織は出来ず、リンパ管腫由来内皮細胞自体がリンパ管腫の原因である可能性が示された。また移植したマウスはリンパ管腫モデル動物として今後活用出来る可能性が示唆された。PI3K/AKTの活性化はリンパ管腫組織内のリンパ管腫内皮細胞上で高発現であることが確認された。リンパ管内皮のマーカーとして、既に確立されているD2-40、Podoplanin、Prox1抗体を用いた。引き続きリンパ管腫内皮由来細胞株、市販されているリンパ管内皮細胞を含むHUDMEC等を用いて、in vitroでリンパ管内皮細胞のシグナル伝達阻害剤に対する反応をアポトーシスアッセイにて検討した。またリンパ管腫由来内皮細胞に対しては、gene chipを用いた遺伝子発現検討、全ゲノムメチル化検索等を行いあらたな分子標的の発見を試みている。現在までの検討の限りではリンパ管腫に特異的な反応は認めらなかった。
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