研究概要 |
本研究の目的はラット肝移植モデルにおける制御性T細胞による寛容誘導の基礎的検討であり、Lewis(LEW, RTll)ラットからDark Agouti(DA, RTla)ラットへのMHC不一致間同所性肝移植モデルを作成し研究が進行中である。同モデルはMHC不一致にもかかわらず自然生着モデルであり、その寛容モデルの作成は予定通りに進んでいる。 中間報告として第109回日本外科学会定期学術集会において本研究に用いている肝移植モデルのドナー特異的抗原刺激の関与について報告した(下記)。 現在も同モデルを用いて制御性T細胞の関与について検討を進めているが、寛容確立するまで移植後60日の期間がかかるため、まだ十分な数のサンプルも得られず有意な結果を得るには若干の時間を要する。 また移植寛容が確立したラットのリンパ球分画よりその寛容誘導の中心的役割を果たしていることが予想される制御性T細胞(CD4(+)CD25(+)Tリンパ球)を検討しているところであるが、実際に抽出されるリンパ球の数が少なくその養子移植への応用はまだ進んでいない。よってその制御性T細胞中のFoxp3のメッセンジャーRNAのリアルタイムPCRによる検討も来年度以降の課題となっている。 生体内に本来より存在する抑制系の免疫応答つまり制御性T細胞の働きによりドナー特異的な移植寛容を誘導できれば、現在の移植医療における大きな問題の一つである免疫抑制剤による多くの副作用が回避できるなどその臨床的意義は非常に大きい。その臨床応用に向けた基礎的研究として本研究が重要な役割を果たし得ると考えている。
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