研究概要 |
Lewis(LEW, RT1l)ラットからDark Agouti(DA, RT1a)ラットへのMHC不一致間同所性肝移植モデルを作成しラット肝移植モデルにおける制御性T細胞による寛容誘導の基礎的検討研究を行った。同モデルは自然生着モデルであり、免疫抑制を行わずに寛容を誘導し、また放射線照射にて拒絶を惹起できる。 本研究では移植寛容が確立したドナーのリンパ球をCD4陽性あるいはCD8陽性にソーティングし、それぞれを養子移植することにより寛容誘導を確認した。その結果予想される制御性T細胞分画(CD4(+)CD25(+)Tリンパ球)のみならずCD8陽性の細胞分画にも寛容誘導能があることが明らかになった。これらの結果から、寛容が確立されたラットリンパ球中に従来より想定きれていた制御性T細胞とは異なる細胞群が存在することが示唆された。 中間報告としては第110回日本外科学会定期学術集会において本研究に用いている方法と同様の心移植モデルのドナー特異的抗原刺激の関与について報告した(下記)。これは本研究でも対象としている制御性T細胞に対してドナー特異的抗原刺激することにより寛容を誘導、さらに寛容状態を持続させうることを示したものである。 生体内に元来存在する制御性T細胞の働きによるドナー特異的な移植寛容を誘導できれば、現在の移植医療における大きな問題の一つである免疫抑制剤による多くの副作用が回避できるなどその臨床的意義は非常に大きい。その臨床応用に向けた基礎的研究として本研究が重要な役割を果たし得ると考えている。
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