研究概要 |
血管新生阻害剤を含めた分子標的治療薬の臨床応用が進み, 着実な成果をあげている. 血管新生阻害療法の肝転移抑制効果についての詳細なメカニズム解析は不十分であり, 更なる解明が急がれる. 血管新生阻害剤による転移抑制メカニズムを解明するなかで, 転移先臓器の微小環境に着目した研究はなされていない. 本研究では, これまで我々が示してきた血管新生阻害剤TSU68による大腸癌肝転移抑制効果, さらに転移形成前の肝臓内ケモカイン産生抑制に関わるメカニズムを解析する. VEGFを発現するヒト大腸癌肝転移モデルTK4をヌードマウス盲腸に同所移植した群(担癌マウス)および対照群として非担癌マウスを設定し, それぞれにTSU68投与群とControlとしてのVehicle投与群を設定する. 移植7日目よりTSU68(400mg/kg/day)の経口投与を開始する. 投与開始7日目(それぞれTSU68投与群 ; n=20, Control群 ; n=20)にマウスを犠死させ, 門脈血, 静脈血を採取する. 得られた門脈血, 静脈血中の各種サイトカインをジェネティックラボ社のマルチプレックスサスペンションアレイ(サイトカインアレイ)を用いて解析し, 肝臓内のケモカイン産生に関わる因子の変動を解析した結果, 門脈内のサイトカインIL-12 p40サブユニットが担癌状態で上昇し, TSU68投与によって抑制されていることが示された. IL-12 p40はNF-kBを活性化させることが知られており, これを介する肝臓内CXCL1の発現制御が示唆された. そこでIL-12 p40に対する中和抗体を投与したところ, 有意な肝転移抑制効果が確認された.
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