申請者らは大腸癌細胞を用いた実験でケモカイン受容体CXCR3はリンパ節転移に、CXCR4は肝転移に関与することを既に報告していたが、さらに臨床検体を用いた検討でCXCR3とCXCR4はいずれも発現群は非発現群よりも有意に予後が悪いこと、さらに両者を共発現している症例が最も予後が悪いことを明らかにした。その機序として、高い転移能をもつ大腸癌細胞株SW620 (CXCR3とCXCR4を内在性に共発現している)を用いたin vitroの検討で、CXCR3やCXCR4はそれぞれのligandに対して走化能、浸潤能を示すばかりでなく、CXCR3 ligandの刺激条件下ではCXCR4の遊走能、浸潤能、増殖能のいずれもが増強されることを明らかにした。これらの結果はCXCR3とCXCR4の間には相乗効果があることを示しており、さらにその機能解析を進めるため、SW620細胞にmiRNAを遺伝子導入することで(1)CXCR3のみを発現抑制、(2)CXCR4のみを発現抑制、(3)CXCR3とCXCR4の両方を発現抑制、した3種類の安定細胞株を樹立した。これらの3種類の細胞株を用いてマウス転移モデルにおいて転移能がどのように変化するか、微小転移段階から肉眼的転移巣形成段階までを経時的に解析中である。今後は臨床応用をめざし、(1)CXCR3阻害剤(AMG487)、(2)CXCR4阻害剤(AMD3100)、(3)CXCR3阻害剤(AMG487)+CXCR4阻害剤(AMD3100)の両方、をマウスに投与する事で転移能がどのように変化するか、検討を進めることを予定している。
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