背景・目的) 肝切除術後肝再生のメカニズムは肝細胞と間葉系細胞の再生により構成されるが、大量肝切除術後の過度の肝細胞増殖と比較して類洞内皮細胞増殖が相対的に減少による肝微小循環障害が惹起され、機能的肝細胞数減少により術後肝不全が引き起こされる。ソニック・ヘッジホッグ(SHH)は、多くの器官系のデザインの形成に必須で、特に膵細胞の発生に抑制的に働くことや、TGF-β supergene familyに属し、肝細胞増殖を抑制し肝類洞内皮細胞の増殖を促進するactivin β投与により過剰発現する。本研究では肝再生における新たな調節因子をなりうるSHHの作用機序について解明する。 方法・結果) ・ 肝切除におけるSHHの発現 Wistar Rat7週齢を用いて、肝左葉・中葉切除(70%肝切除)、肝左葉・中葉・右葉切除(90%肝切除)を施行し術後経時的(0、24、48、72時間)に検討した。 70%肝切除モデルにおいて免疫組織染色ではSHHは経時的に発現が上昇していた。 またReal time PCRで、SHHは術後各時間における差を認めないものの術後発現の増加を維持していることを確認した。同様にPtchは発現が低下しておりSHHによる抑制効果が確認された。 90%肝切除におけるSHHの発現については現在検討中である。 今後の予定) ・ SHHの作用発現伝達因子であるPtch、Smo、Gli発現を確認(免疫組織染色、Real time RCR)するとともに肝再生率による相違について比較検討する予定である。 ・ activinやactivinの発現を抑制するfollistatin(肝再生促進因子)投与による肝再に対する効果を確認しSHHや関連因子の発現の変動について同様に比較検討する。 これらの検討により肝再生におけるSHH発現の機序・意義について解明する。
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