【背景・目的】小腸移植における虚血再灌流傷害は様々な重篤な臨床症状を引き起こし、中でも腸管粘膜傷害やそれに引き続くバクテリアルトランスロケーション(BT)の亢進は予後を左右する重要な因子の一つである。一方、肝虚血再灌流は肝細胞傷害のみならず門脈圧亢進による小腸鬱血を引き起こし、小腸虚血再灌流傷害と非常によく似た病態を示す。GGAはHSPを誘導し、肝虚血再灌流傷害を軽減することが知られており本年度の研究ではGGA誘導HSPの全肝虚血再灌流時の門脈圧亢進による小腸粘膜傷害に対する予防効果を実験検討した。 【対象・方法】実験1. Wistar系雄性ラット(n=8)を2群に分けた。非投与群 : vehicleを全肝虚血4時間前に1回経口投与。GGA投与群 : GGAを全肝虚血4時間前に1回経口投与。全肝虚血再灌流は肝十二指腸間膜を血管クリップで30分間クランプし、クランプを解除した。検討項目 : 再灌流後6、24時間でトライツ靭帯から10cmの小腸と肝左葉を採取し、小腸はHE染色で粘膜障害度をchiuらの分類で判定し、HSP70免疫染色でHSP70の発現を確認した。実験2. DKTをWistar系ラット6日間絶食モデルに5日間経口投与し小腸粘膜、炎症性サイトカインを検討した。 【結果】実験1. 非投与群 : 再還流後24時間の肝臓は細胞内に空包変性、類洞の破壊が見られ、小腸は6時間で絨毛の膨隆、出血、先端の破壊が見られ、粘膜障害度スコアは重症を示す平均4.5であった。GGA投与群 : 再還流後24時間の肝細胞内の空包変性はわずかで、類洞構造は保たれていた。小腸は6時間で絨毛の膨隆、出血、先端の破壊はなく、粘膜障害度スコアは重症を示す平均1.5で比較的よく保たれていた。実験2. 小腸絨毛はDKT濃度と相関して保たれており、炎症性サイトカインはDKT濃度と逆相関していた。今後小腸虚血モデルと移植モデルを用いて腸管の炎症性サイトカイン等を検討予定としている。
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