研究概要 |
【背景・目的】小腸移植における虚血再灌流傷害では、腸管粘膜傷害やそれに引き続くバクテリアルトランスロケーション(BT)の亢進は重要な予後因子である。Geranylgeranylacetone (GGA)は肝虚血再灌流傷害を軽減することが知られている。本研究では小腸虚血再灌流モデルを用いて小腸粘膜障害に対するGGAの小腸粘膜傷害に対する予防効果を実験検討した。 【方法】実験1.Wistar系雄性ラット(n=8)を2群に分けた。非投与群(n=4):vehicleを小腸虚血4時間前に1回経口投与。GGA投与群(n=4):GGAを小腸虚血4時間前に1回経口投与。小腸虚血再灌流は上腸間膜動脈根部を血管クリップで40分間クランプし、クランプを解除した。検討項目:再灌流後60分後で血中サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8,IL-12,INF-γ,Caspase 3,TNF-α,Egr-1)をRT-PCRで測定した。また粘膜障害程度をHSP70免疫染色で比較検討した。 【結果】GGA投与群で血中炎症性サイトカインIL-1(GGA vs cont:1.78±0.90vs 0.92±0.21, p<0.05)、IL-6(GGA vs cont : 78.5±40.0vs 8.6±5.1, p<0.05)が有意に低下した。Inf-γ,Caspase 3, TNF-αは有意な変化は認めなかった。GGA投与群で転写因子egr-1が有意に低下していた(GGA vs cont : 2.02±1.20vs 0.44±0.28, p<0.05)。またGGA投与群は小腸粘膜HSP70を過剰発現させ、虚血、再灌流での粘膜障害を軽減していた。 【結語】GGA誘導HSPはラット小腸虚血再灌流モデルにおいてEgr-1の発現を抑制、炎症性サイトカインの上昇を抑制し、粘膜障害を軽減した。
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