スキルス胃癌のcDNAマイクロアレイ解析により同定した腫瘍関連抗原SPARCは、膵癌やメラノーマなど多くの癌で高発現することが報告されている。本研究では、SPARCの機能解析を行い、癌の診断および法抗体療法、免疫療法などの分子標的治療への応用の可能性を探ることを目的とする。 1. スキルス胃癌の診断における血清SPARC蛋白測定の意義についての検討 ELISA法により、血清SPARC値の測定に様々な癌の診断的意義があるか否かについて検討を行うため、スキルス胃癌、通常型胃癌をはじめとした各種癌患者の血清サンプルを収集中である。現在までの少数例の検討では、スキルス癌患者血清での優位な血清SPARC値の上昇は認めていない。 2. スキルス胃癌の切除組織における間質および癌細胞のSPARC蛋白の発現の検討し。 免疫組織学的染色を用いてSPARC蛋白の発現を検討中。症例が集まり次第、癌細胞および間質におけるSPARCの発現の程度と、癌の進行度、生存率、無再発率や治療効果との相関を検討予定である。 3. SPARCペプチドを用いたがん免疫療法についての検討。 BALB/cマウスにおいて、自己免疫現象を伴うことなく、H2-K^d拘束性にSPARC陽性細胞株を傷害するSPARCペプチド特異的CTLを誘導できた。さらに、同様のペプチド負荷骨髄由来樹状細胞を投与した後に、SPARCを高発現するマウス乳癌細胞株N2Cを移植し、抗腫瘍効果を検討した。その結果、有意な腫瘍の増殖抑制効果と生存期間の有意な延長を誘導することができた。 現在、癌患者および健常人の末梢血より誘導したHLA-A24拘束性SPARC特異的CTLを用いて、抗腫瘍効果について検討中である。
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