研究概要 |
本研究は膵癌のリンパ行性転移のメカニズムの解明とリンパ節微小転移の膵癌治療における意義を明らかにすることを目的としたものであり, 以下の項目を検討した. 1)リンパ節微小転移を引き起こす膵癌の生物学的特性, 2)膵癌における微小転移リンパ節郭清の意義, 3)膵癌リンパ行性転移におけるリンパ管新生の意義. 方法 : 1)膵癌および正常膵組織におけるリンパ管新生を免疫染色にて比較検討. 2)pNO膵頭部癌症例において, 主病巣のVEGF-C発現およびリンパ管新生を免疫染色にて評価し, 更にリンパ節微小転移の頻度・分布を免疫染色にて評価し, 再発形式との関連を検討. 3)主病巣において, リンパ管内に浸潤した膵癌細胞のVEGF-C発現を免疫染色にて評価. 結果・考察 : 1)膵癌組織では正常膵組織と比較してリンパ管新生が著明に亢進しており, 膵臓では癌化するとリンパ管新生が亢進する, と考えられる. 2)pNO膵癌の52%にリンパ節微小転移を認め, その36%は1群リンパ節には転移を認めず, 2群リンパ節に転移を認めた. 膵癌ではスキップ転移が高率に起こり, 複雑なリンパ行性転移経路を有すると考えられる. 3)pNO膵癌において, 主病巣のVEGF-C高発現症例では, リンパ管新生が亢進しており, 更に広範なリンパ節微小転移を認めた. VEGF-Cによるリンパ管新生はリンパ行性転移の初期において重要なプロセスであると考えられる. 4)pNO膵癌において, リンパ節微小転移は有意な予後不良因子である. リンパ節微小転移症例においても, 郭清範囲にはリンパ節再発を認めなかった. 微小転移リンパ節に対する郭清の意義はあると考えられる. 5)リンパ管浸潤膵癌細胞はVEGF-Cを高発現していた. VEGF-Cによるリンパ管新生, およびそれに引き続き起こるリンパ節微小転移の流れを遮断することで, 膵癌の予後改善につながると考えられる.
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