T-614投与によるラット肝臓内でのNF-κBの活性を調べるために、NF-κBの構成蛋白であるp65の免疫染色を平成20年度の実験として摘出肝に対し行ったが、染色性が不確実なものであったため評価対象としては不確実なものであった。一方、IL-8抑制効果と抗血管新生効果については一定の結果が得られた。本実験系は、T-614が持つIL-8抑制効果による抗血管新生療法という観点と、NF-κB抑制による抗サイトカイン療法の相乗効果を狙ったものであるため、NF-κBに関する検討が不可欠と考えた。そこで本年度はNF-κBの定量化を行い、再評価することを目標とした。解剖時に凍結保存していたラット摘出肝臓から核蛋白を抽出し、NF-κBをELISA kitを用いて定量化した。しかしながら、定量結果には個体によるばらつきが激しく、また数値化できない個体も見られた。これは解剖時に肝を摘出してから凍結するまでの時間にばらつきがあったことや、凍結するまでの時間経過が長かったことが原因として考えられた。結局NF-κBの抑制効果に関しては検討に値するデータが得られず、今回の実験では結果を出すことが出来なかった。 抗サイトカイン療法の証明には至らなかったが、もう一つの目的としていた、血管新生関連サイトカインIL-8を介した抗血管新生療法の可能性については平成20年度の実験で十分な評価が出来たと考えられたため、この結果をもとに論文を作成中である。今後我々はT-614が持つ抗腫瘍機構の解明のために更なる実験を進めていく予定である。
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