独自に作製した、KGFRに対する特異的ポリクローナル抗体を用いて、培養食道癌細胞4系統(TE-1、8、11)におけるKGFRタンパクの発現を確認した。十分なインフォームドコンセントを得た後、当施設において切除されたヒト食道癌組織と近傍の正常組織の新鮮凍結標本を作製し、同部のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を作製した。ヒト食道癌組織と正常組織の新鮮凍結標本を用いてRT-PCRを行ない、KGFR mRNAの発現を確認した。KGFRに対するジゴキシニゲン標識cRNAプローブ(riboprobe)を作製し、ヒト食道癌組織上でKGFR mRNAの発現を確認し、KGFRの産生細胞を同定した。上記のKGFR抗体を用いて、食道癌組織と正常食道組織のホルマリン固定パラフィン包埋組織におけるKGFRタンパクの局在を検討した。また、連続切片上で細胞増殖マーカーであるKi-67を用いた染色を行ない、比較検討した。さらに細胞分化のマーカーとしてCytokeratin 20で染色を行ない、それぞれの局在に相関があるか検討した。 KGFR mRNA、タンパクとも全ての培養細胞にみとめられ、KGFRタンパクの局在は癌真珠の中心部に向かうほど豊富にみとめられた。食道癌組織におけるKGFRの発現は腫瘍の分化度と有意な相関がみとめられた。ligandであるKGFの発現はリンパ管侵襲、リンパ節転移と有意な相関がみとめられた。
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