研究概要 |
Cytochrome P450(CYP)系は生体内で大量に存在するPhase I酵素ファミリーの一つであり、様々な発癌物質の代謝活性化に関わる。大腸癌においては発癌物質の代謝や抗癌剤に対する効果の面から注目されており、様々なCYPと大腸癌リスクとの関連が報告されている。CYP2A6は、タバコ特異的発癌物質の代謝活性化や抗癌剤であるTegafurの代謝活性化を主に担っている。これまでに我々は、ヒトの大腸腺癌及び腺腫において、特異的にCYP2A6が過剰発現していることを報告した。また、癌に隣接する非腫瘍性大腸陰窩上皮においては、大腸癌細胞と同様に、CYP2A6が過剰発現しているという興味深い知見が得られた。ヒト大腸癌培養細胞株DLD-1, HCT-15, LoVo, Colo201, SW480を用いて酵素抗体法、RT-PCR法にてCYP2A6の発現を検討し、ミクロソーム分画を用いcoumarin 7-hydroxylation microassay法にてCYP2A6活性を測定した。CYP2A6がほとんど発現していないDLD-1細胞にCYP2A6遺伝子発現ベクターを用いて遺伝子導入を行い、CYP2A6発現株を樹立した。今後は、CYP2A6の過剰発現が大腸癌の増殖、浸潤、薬剤抵抗性に与える影響について検討する予定である。特に、TegafurはCYP2A6によって代謝活性化され、DNA合成経路を阻害し細胞増殖を阻害する抗癌剤であるので、その影響を検討する。本研究によって、大腸癌発生の予防と新たな臨床治療の方策を見出す道筋を拓くことになるものと考えられ、新たな治療薬の開発につながる可能性がある。
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