研究概要 |
本研究は、近年増加傾向にあり日本人死因の1.2%となっている動脈瘤に対し、根治手術となる人工血管置換術が、余りに侵襲が大きいために、手術を受けることが困難となるような患者に対し、病理・病態的観点からアプローチし、新たな治療法を開発する。 [担体の開発]昨年度同様Doxycyclineを、生体吸収性材料に混和し徐放化するドラッグデリバリーシステムを開発した。生体吸収性材料としてポリ乳酸のみとすることで、徐放をより緩やかにすることが可能であった。 [doxycycline溶出担体の効果]doxycycline溶出担体は、平滑筋細胞との共培養で、単培養に比し、有意にMMP12の遺伝子発現を抑制し、TGF-b1、Loxの遺伝子発現を促進した。さらに、マクロファージとの共培養では、MMP9およびMMP12を有意に抑制した。 「動脈瘤モデルの作成」アポリポプロテインEノックアウトマウスにアンギオテンシンIIを持続注入することで、動脈瘤モデルを作成した。 「動脈瘤発症抑制モデル」腹部大坊脈にdoxycycline溶出担体を被覆し動脈瘤発症抑制効果を観察した。エラスチンの分解は有意に抑制され、MMP-2,9の発現も有意に抑制された。さらに、IGF-1やTIMP-1の発現は亢進し、炎症性サイトカインのIL-6やTNF-aは有意に抑制された。 doxycycline溶出担体の動脈瘤発症抑制効果が十分に示唆された。本実験を今後も大動物へと発展させ、臨床応用に近づける必要があるであろう。
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