前年度に引き続き、wild-type(WT)、TLR4/MyD88/TRIF knock-out(KO)マウスを用いて「30分間虚血+120分間再灌流」の心筋虚血再灌流障害(MI/R)モデル、「5分間虚血+5分間再灌流+5分間虚血+5分間再灌流+5分間虚血+30分間再灌流+30分間虚血+120分間再灌流」のischemic preconditioning (IPC)+MI/Rモデルを作製し、梗塞範囲に加えMAPKs活性、転写因子活性、炎症性メディエーター発現、及びアポトーシス関連タンパク質/遺伝子発現を測定した。MI/Rにおいて、TLR4 KO及びMyD88 KOではWTと比べ、梗塞範囲は有意に抑制され、同時にJNK活性、NF-κB活性、及び炎症性メディエーターの発現も有意に抑制された。一方、IPC+MI/RにおいてWT及びMyD88 KOでは、IPC直後にJNK及びNF-κB活性の有意な上昇を認め、梗塞範囲及び炎症性メディエーターの発現は有意に抑制されるも、TLR4 KO及びTRIF KOではIPC直後のJNK及びNF-κB活性の有意な上昇を認ず、梗塞範囲及び炎症性メディエーターの発現の抑制を認めなかった。アポトーシス関連タンパク質/遺伝子発現においてはMI/R、IPC+MI/Rいずれにおいても有意差を認めなかった。以上より、TLR4を介した細胞内シグナル伝達においてMyD88依存経路がMI/Rを、MyD88非依存経路がIPCを誘導することが示された。したがって、TLR4からNF-κBに至るシグナル伝達経路の相違がNF-κBの相反する作用の振り分けに関与していることが示唆された。
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