肺移植後の虚血再還流障害は移植後成績に大きく関与している。冷虚血、温虚血による移植肺障害の分子レベルでの違いを明らかにし、その中でも特に炎症に深く関与していると考えられている転写因子Egr-1 (early growth response gene-1)に着目した。マウスを用いた左片肺移植モデルを用いた。ドナーより摘出した肺を長時間の虚血後に移植すると、再灌流障害により肺機能は著しく悪化する。しかしEgr-1がノックアウトされた肺は摘出後に長時間保存した後でもレシピエントに移植後も良好に機能した。IL-1B、MIP-2、IL-6などの炎症性サイトカインの発現の抑制を認めた。またレシピエント側のEgr-1をノックアウトのみでは移植肺(ドナー側)のノックアウトに比して肺障害は抑制されなかった。本研究では移植肺内でのEgr-1を抑制することにより炎症性サイトカインが抑えられ、長時間保存後の再灌流障害を抑制される可能性が示唆された。
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