悪性神経膠腫の治療として、骨髄幹細胞を用いた遺伝子治療の臨床応用に向けての基礎実験を行うことが本研究の目的である。 使用細胞は、9週齢SDラットの長幹骨より骨髄を採取し骨髄間葉系幹細胞(MSC)を培養し、HSVtkretrovirus-producing cells(PA317)を用い、MSCtkを作成した。 In vitroにおけるMSCtkの脳腫瘍細胞に対する効果の検討では、MSCtkとC6(ラット脳腫瘍細胞)とを混在培養し、ganciclovir(GCV)を投与し、異なった細胞比率にて、効果がどのように出るか調査した。1:32でも脳腫瘍細胞の死滅効果が得られた。また、より早期のGCV投与にてより効果が得られ、投与期間は3日間以上が望ましいことが分かった。 自殺遺伝子療法が正常細胞に及ぼす影響の検討では、neuron primary cultureを行い、その培養中で、C6およびMSCtkを混培養しGCVを投与し、Bystander効果発現時のneuronへ与える影響および抗腫瘍効果を観察した。この実験により、bystander効果が発現されても、正常脳細胞へ与える影響は見られなかった。 今回の実験にて、MSCtkを用いた悪性脳腫瘍に対する治療は補助療法として十分効果が期待できた。また、今後の臨床応用へのプロトコール作成に重要な基礎実験を行うことができた。現在、in vivoでの研究を遂行中である。 治療困難な悪性神経膠腫の治療の選択肢となり得る研究が進んでいることは、悪性脳腫瘍の治療に難渋している臨床の現場において、希望の光となるものである。臨床実験へと進めば、多大なインパクトを与えるものである。
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