本研究は、ブタ頚動脈に実験的動脈硬化性病変を誘導して、高磁場MRIによる経時変化及び脳塞栓症の関係を明らかにすることである。本年度は動物モデル作成を主目的とした。生後6ヶ月以内のミニブタの頚動脈を外科的に部分結紮して外科的狭窄を作成した。手術直後の血管撮影で約80%の狭窄が作成されたことを確認、さらにドップラー血流測定ワイヤーにて狭窄部近位および遠位に、激しい乱流が発生していることを確認した。その後、食餌操作(20%Lard/4%Cholesterol)による高脂血症の状態で約3-6ヶ月飼育した。約3-6ヶ月後に安楽死させ、頚動脈を摘出した。外科的狭窄の近位部にて動脈硬化性病変が誘導される一方、狭窄遠位部には明らかな病変は確認出来なかった。摘出病変を組織学的に分類すると、いくつかの病変で粥腫内の出血や石灰化を伴っており、アメリカ心臓病協会(AHA)による組織学的分類で高度の進行病変(Stage6)であることが示された。また、プラーク破綻を来しうる、繊維性皮膜の菲薄化や皮膜直下の出血も確認されており、脳塞栓症を来しうる、いわゆる「不安定病変」と考えられた。さらに、狭窄部遠位に位置するRete mirabileを摘出して組織学的検査を行うと、いくつかの個体で内腔に脂肪片や血栓が確認された。これらは近位に誘導された動脈硬化性プラークからの塞栓を強く示唆する。今後、この動物モデルを用いて、誘導病変をMRIにて経時的に追跡、その所見とReteの塞栓性病変の有無の相関を調査する。
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