研究課題
平成22年度の目標として、正常脳56名の収集と解析を行うことであったが、収集については完成し、解析については脳回と脳溝の立体構成がほぼ終了した。日本人脳についての解析結果から、特に中心溝については従来から教科書で指摘されていた帯状溝縁部後方との位置関係が必ずしも一定でないことを学会で発表した。帯状溝縁部後方から常に中心溝を決定する方法だと、中心後溝を誤って同定する可能性があり、脳外科手術で留意する必要があることを指摘した(機能的脳神経外科2010)。同時に、収集した56名の健常脳から、左利き、ベルガ腔、くも膜嚢胞を除外した50名について中心後溝の表面積、深さ、体積などを解析し、皮質形成異常患者や脳腫瘍患者と比較した。その結果、皮質形成異常の患者では中心後溝が帯状溝縁部後方に連続する特徴を示し、健常脳にも認めるものの、Relationsという脳溝の評価系において一定の傾向を示した。このことより、健常脳においても皮質形成の発達に関する一つの可能性を示すと思われ、CI研究に投稿し、査読中である(2011)。共同研究者と、てんかん患者のてんかん原性発見の手法として、脳溝を基にしたこうした解析は一つのマーカーとして有用であるという結果をまとめ、Neurosurgeryに共著者として発表予定となった(2011、in press)。これらの結果を総合すると、脳皮質形成のメカニズムに迫ると同時に、形成異常の発見にもつながる臨床応用の可能性が開けたこととなり、今後のさらなる研究についての道筋が示された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Neurosurgery
巻: (in press)
機能的脳神経外科
巻: 49 ページ: 201-207