研究概要 |
これまでに当施設で蓄積してきた脳腫瘍治療前後の拡散強調画像に対し、fDM(Rossほか、Proc Natl Acad Sci USA 2005 ; 102 : 5524-5529)による解析を行った。解析にはI-response fDM analysis(Windows)を用い、DICOM画像の解析編集はOsiriX(Macintosh)を利用した。最初に、悪性神経膠腫症例での標準治療(X線分割外照射+化学療法(テモゾロミド))により治療を行った例で、本解析法を用いたRossらの報告(J Clin Oncol. 2008 Jul 10 ; 26(20) : 3387-94)と対比し、同等の結果が得られ、早期の治療効果・予後判定が可能となることがわかった。そこで次に、当施設で治療を行った症例のうち、棚素中性子捕捉療法(BNCT)により治療を行った悪性神経膠腫を対象として、生存期間などの情報とfDMの経時的変化を検討した。通常の放射線治療(分割外照射)では、腫瘍のADC値は治療が進むにつれADC値上昇の容積(%Vi)が増加し、予後との相関が見られていたが、BNCTでは治療後早期(2, 7日目)のADC値減少の容積(%Vd)が予後との相関を示し、超早期の効果判定の可能性を示した。BNCTでは単回局所高線量の粒子線治療であるごとから、別の機序での細胞死が関与しているものと考えられ、動物実験等による詳細な病理組織学的検証が必要と考えられる。さらに本年度、拡散強調像を用いた病態解析手法として、拡散テンソル画像(FA値解析)を開始し、fDMとの対比を試みており、PETと同時に解析を追加・検証中である。また本年度は、動物実験の開始に先立ち、ラット脳腫瘍モデルを用いて拡散強調画像等のMRI画像を取得し、脳腫瘍モデルが画像上、実際の臨床所見に合致することを確認し、得られた画像を用いてfDM解析が可能であることを確認した。
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