研究概要 |
今年度は、トランスフェリンーポリエチレングリコールを付加したホウ素化合物sodium borocaptate(BSH)およびヨード造影剤であるlomeprolをリボソーム内に同時包埋したTF-PEG{BSH, I}を用いてin vitroでの腫瘍細胞へのホウ素の集積、脳腫瘍ラットモデルにおける腫瘍組織へのホウ素の集積およびCT画像での可視化を検討した。培養脳腫瘍細胞においてはPEGのみを付加したBSHおよびIをリボソーム内に同時包埋したPEG{BSH, I}に暴露した場合に比して約3倍の腫瘍細胞内へのホウ素の集積がみられ、TF-PEG{BSH, I}の高いホウ素運搬能が実証された。ラット神経膠芽腫細胞を移植した脳腫瘍モデルラットに対し、腫瘍内にconvection enhance delivery法を用いて前述のホウ素化合物を投与したところ、投与24時間、48時間後でPEG{BSH, I}投与群に比して有意に腫瘍内ホウ素濃度は高値を示した。BNCT施行時に重要とされているホウ素濃度の腫瘍/正常組織比はTF-PEG{BSH, I}投与群で投与24時間後に274と極めて高値であり高い腫瘍選択性が実証された。また経時的にCTを撮影したところPEG{BSH, I}投与後24時間で造影効果は消失したのに対して、TF-PEG{BSH, I}投与群では72時間後に至るまで腫瘍に一致した増強効果が確認された。以上の結果より、TF-PEG{BSH, I}はホウ素化合物の高い選択性を実現し、かつホウ素運搬領域がCTにて可視化できることが実証された。同ホウ素化合物を用いることでより、BNCTのより高い腫瘍選択的な治療効果が期待され、照射前にその分布を可視化することで精密な線量計画が可能になると考える 来年度は、脳腫瘍モデル動物、同ホウ素化合物を用いての中性子照射実験を行いその強力な抗腫瘍効果を証明していきたい。
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