昨年度より継続し、極めて難治性である悪性脳腫瘍(グリオーマ)に対し、光感受性物質の放射線感受性増強効果を検討してきた。我々は、すでに、光感受性物質としてすでに臨床応用されている5-aminolevulinic acid(以下5-ALA)を使用し、ラットグリオーマ細胞株(9LおよびC6)を用いて、放射線照射単独と比較し、放射線照射と光感受性物質(5-ALA)を併用することにより、より強い殺細胞効果が誘導されることが証明した。従来は高濃度(10mM)の5-ALAを用いて、MTT assay法で評価を行っていたが、今回は、低濃度の5-ALA(1mM)を使用し、colony forming assay法での再検討を行った。細胞株の種類によって放射線感受性増強効果に若干の差があるものの、5-ALAを前処理することで殺細胞効果が増強されることをわかった。1回の放射線照射による5-ALAの増強効果は低いものの、分割照射をすることにより、その効果が蓄積されることがわかった。5-ALAの放射線感受性増強効果に関するメカニズムを証明した報告はなく、我々は"何らかの活性酸素種が殺細胞効果に影響している"という仮説のもと、共焦点レーザー顕微鏡を使用し、5-ALAの前処理を行った細胞株において放射線治療の際に発生する活性酸素を、DCFDを蛍光試薬として、活性酸素のイメージングを行った。5-ALAで前処理した細胞株においては、そうでない群と比較し、より多くの活性酸素(蛍光)が検出されていた。また、5-ALAから誘導される細胞内PpIXと、活性酸素発生(蛍光)の部位が一致している部位が多いことから、5-ALAに誘導された細胞内PpIXが、放射線照射下において、細胞内活性酸素の発生に深くかかわっており、結果として、5-ALAの放射線感受性増強効果していることが示唆された。
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