前年度に引き続き温熱刺激による骨肉腫細胞の反応を調べた。温熱刺激により転移を促進する分子である自己分泌型細胞運動刺激因子(autocrine motility factor以下AMF)の発現が減弱したことから細胞の運動の変化を測定したところ細胞運動は温熱刺激により著明に減弱した。これらのことから骨肉腫細胞においては温熱刺激によりAMFを介した転移能が抑制されることが示唆された。また骨形成能には大きな変化は認められなかったがマイクロアレイの結果をみると骨形成因子BMPの発現に関してサブタイプによって減弱しているものと増強しているものがありこれらが相殺し合っている可能性が考えられた。 AMFは糖代謝に関わる分子phosphoglucose isomerase(PGI)と相同な蛋白であることが知られている。今年度はAMFの発現がFDG-PETで評価された糖代謝の指標となる値standardized uptake value(SUV)と相関するという知見をもとに転移性骨腫瘍をFDG-PETにて解析した。骨への転移病変のSUVと原発巣のSUVを比較したところ転移病変のほうが優位に高い値を示した。AMFは転移を促進する分子であり転移巣のほうが高い糖代謝を示したことは今までの知見と矛盾しない結果であると考えられた。 悪性腫瘍は骨転移する際に破骨細胞を利用して転移巣を形成することが知られている。上述の結果をもとにして破骨細胞においても糖代謝関連分子、AMF発現を確認している。
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