研究概要 |
1) アルガトロバンは腹腔内注射で10分後にピークを迎え、30分後には完全に効果は消失した。アルガトロバンの効果は極短時間であり、マウスの持続的な凝固活性の抑制は困難であるため、アルガトロバンは本研究には不適切と判断した。また、ダナパロイドナトリウムは、明らかな肺転移抑制効果を認めなかったため、本研究には不適切と判断した。ワーファリンは、マウスに投与終了後6時間効果が持続し、12時間で効果がほぼ消失したため、長時間の安定した凝固抑制が小動物でも可能と判断し、以後の研究はワーファリンを使用した。2) ワーファリンをマウスの飲水ボトルに入れ、3日後の凝固活性を測定した。PT(Prothrombin Time)およびINR(International Normalized Ratio)は濃度依存性に延長した(INR : 0.85 at control, 2.04 at 200μg/100ml, 5.81 at 250μg/100ml and 9.52 at 300μg/100ml)、(PT : 9.4 at control, 17.5 at 200μg/100ml, 48 at 250μg/100ml and 62.2 at 300μg/100ml)。ワーファリンでの凝固活性抑制状態におけるB16melanoma細胞(B16)の肺転移数は、ワーファリンの濃度依存性に抑制された(-58.8% at 200μg/100ml, -89.3% at 250μg/100ml, -98.6% at 300μg/100ml vs. control)。臨床での凝固抑制のコントロール値はINR2-3台であり、INR2(200μg/100ml)以上にコントロールすることで、少なくとも58.8%の肺転移を抑制することが期待できるという結果となった。3) 転移がすでに存在している患者への凝固抑制の影響を検討するため、B16を皮内注射し、ワーファリンを投与開始した。2週間目での評価は、INR2の生存率が最もよい結果であった(survival rate at 2 weeks, 67% : control, 75% : 200μg/100ml, 25% : 250μg and 300μg/100ml vs. control)。凝固活性の過度の抑制は、腫瘍からの出血により生存率が逆に低下した。以上より、ワーファリンの濃度依存性に肺転移を抑制できるが、高濃度では逆に生存率を低下させるため、INR2(200μg/100ml)程度の凝固活性が臨床的に応用可能な値であることが伺えた。4) 最大ワーファリン投与マウスおよび非投与マウス(コントロール)に対し、B16を尾静脈投与後、肺転移巣を採取し、腫瘍細胞を分離、培養した。現在同様の作業を3回施行した。現在、4回目の作業を行っている。
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