昨年度は東海大学整形外科教室から譲渡して頂いたヒト椎間板髄核細胞の不死化細胞株を用いてsiRNAを用いた内在性FasL遺伝子の発現抑制を試みたが有意な効果が得られなかった。その理由はこの細胞株においてはFasLの絶対的発現量が少ないためと考えた。そこで本年度はこのヒト椎間板髄核細胞の不死化細胞株にelectroporation法を用いたFasLの過剰発現を試みた。昨年度は数回の再現性確認実験を行い、mRNAレベルではFasLの発現率は平均60%以上と高い導入効率を示していた。そこで今回はWestern blottingによるタンパクレベルでの発現量の確認を行った。electroporationを行った後、経時的に細胞を回収してFasLのタンパク量を確認したところ遺伝子導入後6時間で最も発現良が高くその後は減少する傾向が明らかになった。この特性を利用して、FasL過剰発現後6時間でこの細胞をマクロファージと共培養することで刺激すると、その培養液中のIL-1やTNFαなどの炎症性サイトカインが上昇する傾向にあることが明らかになってきている。また他にも共培養した細胞のcell lysatesからカスパーゼ8を中心としたdeath signal周辺遺伝子の発現量を定量しているところである。FasLと細胞をアポトーシスに誘導するdeath signalの関係については髄核細胞以外では既知の事実である。しかしFasLと炎症性サイトカイン放出のメカニズムについては依然不明点が多い。引き続き再現性実験を行って上記傾向の事実が確認できれば髄核細胞におけるFasLの新たな機能を解明することにつながるものと考えている。
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