平成22年度の研究テーマは、「偽関節症例のタイプによる、偽関節細胞のLIPUSに対する反応性の比較」であった。 まず前年度も報告したが、偽関節細胞培養系においては、骨折血腫細胞と同じ条件でLIPUSのみを作用させても明らかな骨分化促進作用は認められなかった。この結果は、やはり新鮮骨折で生じる骨折血腫細胞と、長期間骨癒合しない状況下に置かれていた偽関節細胞では、その細胞活性に違いがあるものと考察された。そのため、BMP-7 (Bone Morphogenetic Protein-7)存在下にある程度、偽関節細胞に分化誘導をかけてLIPUSの作用を検討した。BMP-7は強力な骨形成能を持つ蛋白質で、欧米においてはすでに難治性骨折治療などに臨床応用されている。LIPUSはBMP-7刺激を受けた偽関節細胞の骨芽細胞系細胞への分化を更に促進するという結果を得た。この結果から、臨床応用する場合、偽関節治療においてBMP-7とLIPUSを併用することでそれぞれ単独よりも優れた治療効果が期待されるという新しい知見が得られた。 骨折が治癒しない偽関節にもいくつかの種類がある。代表的なものとして肥厚型偽関節、低形成型偽関節、骨欠損型偽関節、萎縮型偽関節がある。萎縮型偽関節は症例が少ないので本研究期間中に十分な検討が出来なかったが、肥厚型偽関節、低形成型偽関節、骨欠損型偽関節からは偽関節組織を得ることができ、その組織から分離した細胞を用いて、それぞれのLIPUSに対する反応性を比較した。上記培養条件下において、偽関節のタイプによるLIPUSに対する反応性の違いは認めなかった。この結果のみでLIPUSはどのタイプの偽関節にも同様に有効に作用すると結論づけることはできず、今後も症例数を増やす必要がある。ただし臨床使用において有益な一つの情報が得られたと考えている。
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