研究概要 |
前駆破骨細胞は分化に際し、非必須アミノ酸L-セリン(Ser)を必須因子としている。本申請ではSerの破骨細胞分化における作用機構の解明と、この現象の持つ生理的意義について理解を深めることを目指した。本年度け以下の成果を得た。 1) SerとRANKL-RANKシグナリングとのクロストーク 前年度の結果より、分化因子受容体RANKのSer非存在下における発現低下が見出された。そこでRANKのプロモーター解析、pre-mRNA量、翻訳量等についてSer非存在での変化を調べた結果、Ser非存在下でのRANKの減少は、主に翻訳量の低下とRANKタンパク質の早い半減期によるものであることが示唆された。 2) Ser代謝産物のRANKシグナリングへの関与 Ser代謝物の一つであるスフィンゴシン1リン酸産生に関わるSphK2の発現を低下させた結果、分化に必須なc-Fosの減少が見られ、分化への関与が唆された。 3) 前駆破骨細胞・骨芽細胞におけるL-セリン合成系・輸送系の評価 細胞内アミノ酸濃度の測定より、細胞内Serは培地からのSer除去後8時間以内に枯渇し、同時にいくつかの他のアミノ酸にも減少が見られ、Serの輸送と他のアミノ酸化輸送・代謝との連動が示唆された。また、Ser合成系酵素(PHGDH,PSAT-1,PSPH)の過剰発現による分化への影響を調べたが、Ser非依存性分化能の獲得は見られなかった。一方、骨芽細胞との共存培養実験では、Ser非存在下でも破骨細胞の誘導が見られた。 4) 前駆破骨細胞のin vivo微小環境におけるSer供給を介した分化制御機構の存在の証明 上記Ser合成系過剰発現細胞を用いた移植実験により、破骨細胞分化におけるSerの役割に関するin vivoでの検討に関しては、過剰発現細胞がSer非依存性分化能を示さなかったため、移植実験へと進めることが出来なかった。
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