本研究の前提となる2型糖尿病の骨代謝異常が存在することを、2型糖尿病の存在が椎体骨折の危険因子であり、この椎体骨折は骨密度では予知することができない事を明らかにし、2型糖尿病患者では骨質低下に基づく骨代謝異常が存在することを論文に報告した(J Bone Miner Res)。我々はこの骨質の低下に対し、骨基質の主成分であるcollagenに影響を及ぼすことが想定されていた糖化終末物質(AGEs)のひとつであるペントシジンの増加が、椎体骨折と関連があることを明らかにし、論文報告している(J Clin Endocrinol Metab)。この知見を元に本年度は発展的にこのAGEsをリガンドとする受容体(RAGE)の内因性中和抗体であるesRAGEと椎体骨折と関係することを検討し、報告準備中である。この骨代謝異常は骨形成マーカーであるオステオカルシン(OC)とその非活性型である非カルボキシルオステオカルシン(ucOC)との比の検討において、高血糖状態で低下した骨形成を代償するために非活性型であるucOCを低下させる機序が存在することを第10回骨粗鬆症学会および国際骨代謝学会において報告した。また2型糖尿病男性において種々の因子で調整後においてOCが動脈硬化指標である脈波伝達速度(baPWV)や内頚動脈の内膜中膜複合体(IMT)と負に相関することを論文報告した(J Crin Endocrinol Metab)。 このように課題に対する研究が順調に遂行され成果報告への準備が進行しており、また関連領域から骨代謝と動脈硬化の関連の論文報告、および当該領域の周知活動として依頼論文や学会報告を行っている。
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