平成20年度の本補助金の成果として、2型糖尿病が骨密度とは独立した骨折危険因子であること、ならびその現在の標準的な骨強度の測定法である骨密度ではその強度の低下が評価できないことを明らかにした(J Bone Mineral Res)。また2型糖尿病の骨強度の低下が、終末糖化物質(AGEs)のひとつであるペントシジン量の増加と関係することを見いだした(J Clin Endocrinol Metab)。この強度の低下の機序は、骨コラーゲンの過剰架橋により弾性を失うことで説明されていた。我々はAGEsを認識する受容体(RAGE)を介した骨強度低下の機序を想定し、細胞外でAGEsと結合する分泌型RAGE(esRAGE)とAGEsであるペントシジンとの比を検討した。この結果骨密度とは独立して、相対的にesRAGEがAGEsより不足して「中和作用」が低下すると、骨折の相対危険度が高くなることを見いだした(Diabetes Care 2009)。この結果は臨床において初めてAGE-RAGE系が骨質低下を介して骨折と関係することを明らかにしたものであり、骨質に関する具体的な研究起点を提示する研究成果を得た。この成果は上述の論文に掲載され、その内容は第31回米国骨代謝学会、第11回日本骨粗鬆症学会ならびに第14回国際内分泌学会にて成果報告を行った。
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