本研究の目的は、強度の強い素材と骨伝導性の高いSAPSを併用し初期強度、骨伝導性を両立した骨充填剤を開発することである。今年度は、骨幹部スペーサーを作成と動物実験を行った。 (1)骨幹部スペーサーの作成 : 長管骨骨欠損部における強度を担当させるためにいくつかの素材を検討した。今回は強度と加工の容易さ、生体安全性、X線透過性などの点で利点の大きいPEEK材を使用した骨幹部スペーサーを外注し作成した。また、このスペーサー内にSAPSを充填すべく腔を作成した。高度と内腔のバランスを検討すべく、数種類の形状の内腔を作成し強度を測定した。この成果として強度と十分な内腔を持つ骨幹部スペーサーを完成させた。(2)動物実験モデルでの骨再生実験 : スペーサー内に自家骨、SAPS、生食を充填しラットの骨幹部骨欠損部に移植を行った。この実験では、SAPSを充填したスペーサー内にはかなりの骨形成が認められ、我々の仮設が正しいことを証明できた。また、自家骨を併用することで、スペーサー内に骨の連続性を再現することに成功した。(3)スペーサー内の遺伝子発現の検討 : SAPSを充填し再生を促したスペーサー内では骨関連遺伝子以外に、血管再生因子の発現が亢進していた。SAPSの血管伝導性を支持するデータであり、これまであまり検討されていないSAPSの再生機序の一端を示した。 今年の実験では、SAPSをスペーサー内に充填し骨欠損部に移植することで、強度と骨伝導性を兼ね備えた骨充填剤を開発するというわれわれの仮説が正しいことを証明しえたといえる。来年度にはさらに骨伝導性を高めるべく、成長因子などを用いた実験を行い、より理想的な骨充填剤の開発を目指す。また、SAPSの再生に関する機序について、血管伝導性という視点で、詳細な検討を行う
|