骨芽細胞は間葉系幹細胞から分化することが明らかとなっている。また、破骨細胞の分化及び骨吸収活性は、骨芽細胞によりその細胞表面に発現するReceptor activator of NF κB ligand(RANKL)を介して調節されている。骨粗鬆症治療薬ビスフォスフォネートは、破骨細胞の骨吸収活性を抑制して、骨粗鬆症の進行を抑制していると考えられている。これらの知見はビスフォスフォネートが骨芽細胞の分化を抑制することで骨吸収に影響している可能性を示している。しかしながらビスフォスフォネートの骨芽細胞への作用は、十分に解明されておらず、骨芽細胞の分化に対する影響は殆ど解明されていない。本研究では、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化に対する窒素含有ビスフォスフォネートの一種リセドロネートて(RIS)の影響を解明することを目的とした。ラット胎児胸腺由来間葉系幹細胞様培養細胞ST1BIIbは、アスコルビン酸、デキサメサゾン、βグリセロリン酸を含む培地で培養して、0-21日間に分化が誘導された。ST1BIIbに分化誘導後、6日目から21日目まで時間依存的に石灰化が誘導された。また、骨芽細胞分化マーカーである骨シアロタンパク質のmRNA発現は、分化刺激により顕著に誘導された。10nM-100μMRIS存在下での分化誘導では、石灰化が顕著に抑制された。また、RISは骨シアロタンパク質mRNAの発現を濃度依存的に抑制した。さらに、0.1mM RIS処理は、ST1BIIbのクロマチンの凝集を誘導した。以上の結果は、窒素含有ビスフォスフォネートが、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を抑制することを示唆した。このことは、窒素含有ビスフォスフォネートは骨芽細胞の分化阻害により破骨細胞の骨吸収を抑制している可能性を示唆した。
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