研究概要 |
膝関節における半月板損傷に対する骨髄間葉系細胞 (MSC) 注入の有用性について報告されているが、この組織学的手法を用いた治療効果を高めるために、MSC-磁気ビーズ複合体を関節内に注入し、関節外に留置した磁石により複合体を損傷半月板に集積させ、修復に対する有効性を確認することが本研究の目的である.まずラット骨髄間葉系細胞の単離・培養を行うために、Sprague-Dawleyラット(SDラット)脛骨より骨髄液を吸引・採取した.採取した骨髄液はDMEM+FBS培地を用いて単層培養を行い、培養皿内の接着系細胞をMSCとして継代培養を行った.続いてMSCと磁気ビーズ複合体を作製するために、まず磁気ビーズ(フェリスフェア100C^R)にリガンドとしてRGDSペプチドを結合させておき、培養したMSCとRGDSペプチドを結合させた磁気ビーズを癒合させMSC-磁気ビーズ複合体を作製した.半月板損傷モデルには12週齢のSDラットを用い、予め内側半月板に損傷部を作成した.関節包を縫合した後に1×10^5個のMSC-磁気ビーズ複合体を関節腔内に注入し、膝内側関節裂隙部に小磁石(フェライト磁石)を留置して閉創した.反対側の膝関節にも同様の半月板損傷を作成し、MSCを注入せず関節外に磁石を留置したものを対照とした.組織学的評価により,磁石使用群が対照群に比べ膝関節腔内側にMSC-磁気ビーズ複合体が有意に集積することが確認されたが、細胞注入後8週までの半月板の評価では、対照群と比し明らかな軟骨基質の発現増加などは認められなかった.また,ヒトMSCを用いた免疫不全ラット半月板損傷モデルに対する同様の研究も併せて行ったが,磁石の使用に伴う明らかな半月板の修復効果は認められなかった.
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