目的近年、ゲノム遺伝子の転写後発現調節に蛋白質をコードしないRNAが関与することが新たに示され、ヒトの様々な疾患に関与していることがわかってきた。本研究の目的は、炎症性サイトカインにより発現が誘導されるmicroRNA(miR)-146の変形性関節症(OA)軟骨における発現を解析することである。 方法手術検体より得たOA軟骨15例につき、RNAを抽出し、mature miR-146、Col2a1、MMP13の発現をリアルタイムPCRにより定量評価を行い解析した。軟骨変性の程度をMankin scoreを用いて評価し、Mankin scoreとmiRNA-146aの発現の関連を検討した。OA軟骨の組織切片を作製し、in situ hybridizationを行い、miR-146の発現分布を解析した。さらに正常軟骨細胞をIL-1βで刺激し、miRNA-146の発現を定量評価した。 結果miR-146aの発現はMankin scoreの発現の低い軟骨で、高値を示した。Col2a1の発現も高値である軟骨では、miR-146aの発現も高く、MMP13の発現の高い軟骨では、miR-146aの発現は低い傾向にあった。またmiR-146は軟骨組織表層に強く発現しており、変性の軽度な部位で発現していた。IL-1βで刺激した軟骨細胞ではmiRNA-146の発現量は有意に増加した。 考察本研究結果から、miR-146は、IL-1βによりその発現が誘導され、変性の進行している初期のOA軟骨で強く発現していることが示された。miR-146は、OAにおける初期の軟骨変性に関与している可能性があることが示唆された。
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