本研究課題は、リン誘導性関節軟骨初期変性モデルマウスの確立とその作用メカニズムを明らかにすることを目的としている。平成20年度は、(1)リンの過剰摂取による関節軟骨変性の経時的変化の検討および関節軟骨初期変性モデルマウスの確立(2)P誘導性関節軟骨変性マウスにおけるリカバリー実験(3)マグネシウムが抑制するリン誘導性シグナル伝達経路の特定方法の確立を目指した。 (1) の実験において、pQCT法を用いて骨密度を計測した結果、リン摂取10日目において軟骨下骨骨密度の減少が確認された。また、組織切片を用いて関節軟骨の形状を比較した結果、リン摂取20日目において関節軟骨における軟骨層の減少および軟骨細胞の減少が確認できた。 (2) の実験において、20日間高リン食を摂取させた後、10日間および20日間通常食を摂取させるリカバリー実験を行った。その結果、軟骨下骨の骨密度はリカバリー10日目において回復傾向を示した。 (3) は、リンおよびマグネシウムが関与するシグナル伝達を特定するためのRNAi実験を実施するに先駆けて前駆軟骨細胞株ATDC5へのトランスフェクション効率の検討を行い、RNAi実験系を構築した。 今後は、リン誘導性関節軟骨初期変性マウスが評価系として利用できる可能性を検討する。また、リカバリー実験において関節軟骨の組織切片を作製し、関節軟骨のリカバリーの有無を確認する。 さらに、構築したRNAi実験系を利用し、in vitro実験系を用いて、リンおよびマグネシウムで調節されるシグナル伝達系の特定を試みる。
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