本研究課題は、リン誘導性関節軟骨初期変性モデルマウスの確立とその作用メカニズムを明らかにすることを目的としている。平成21年度は、(1)P誘導性関節軟骨変性マウスにおけるリカバリー実験(2)リン誘導性関節軟骨初期変性マウスの評価系としての利用の検討の2点を中心に実験を行った。 (1)の実験において、リンの過剰摂取20日目において減少したマウスの骨密度は、通常食を摂取させることで10日後に回復傾向を示した。一方、高リン食で誘導された関節軟骨の減少は回復しなかった。本実験結果から、当モデルにおいての関節軟骨変性作用は、リンが関節軟骨の軟骨細胞に直接作用している可能性と、関節軟骨の土台となる軟骨下骨の骨密度減少の結果、二次的に関節軟骨が変性した可能性が示唆された。 (2)リン誘導性関節軟骨初期変性マウスを用いてコラーゲン加水分解物中に含まれるジペプチドPro-Hypの摂取が関節軟骨の維持に与える影響の有効性評価を行った。その結果、Pro-Hypの摂取が初期関節軟骨の変性予防に有用であることが確認でき、変形性関節症の専門誌であるOsteoarthritis and Cartilageに投稿することができた。 今後は、リン誘導性関節軟骨初期変性モデルマウスの血清骨代謝マーカーおよび軟骨マーカーを測定して、本モデルのメカニズムを明らかにすることを目標とする。
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