本研究の目的は、マウス体細胞由来人工多能性幹細胞(以下iPS細胞)より神経幹/前駆細胞を誘導し損傷脊髄に移植してその有効性を確認し、脊髄損傷への再生治療を実現させることである。iPS細胞は胚性幹細胞(ES細胞)と同様に高い増殖能と様々な細胞へと分化できる分化多能性を有する幹細胞である。iPS細胞が自家組織由来の移植細胞源になりうるという点からも、免疫学的・倫理学的問題はES細胞や胎児由来神経幹細胞に比べて少なく、臨床応用に極めて近い細胞供給源と考えている。本年度において我々は、まず発光酵素CBRlucと赤色蛍光蛋白質mRFPを同時に発現するレンチウイルスベクターを作製し、Nanog遺伝子を指標として樹立されたNanog-iPS細胞のうち安全性の確認された38C2グローンより誘導されたNeurosbhereに感染させ良好な発光をin vitro及びin vivoにて得ることができin vivoでの生着を定量的に評価し、移植5週間経過後約20%の細胞が生着していることが分かった。これらの生着した細胞は腫瘍化を呈せずこニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの神経系三系統へ正常に分化していた。このラベルされたneurosphereを損傷脊髄に損傷後9日目に移植すると、マウスES細胞由来神経幹細胞移植群とほぼ同等であった。また、iPS細胞のもとになる線ビークル群と比べて有意に良好な後肢機能回復が得られており、まだ機能回復の度合いは維芽細胞も対照群とじて比較し、線維芽細胞移植群では機能回復は得られず、Basso Mouse Scaleでの評価ではビークル群とほぼ同等の程度であった。
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