椎間板障害は腰痛のみならず"motion segment"における"imbalance"を来たし、多彩な脊椎変性疾患を誘引しうる重大な問題である。我々は細胞移植による変性抑制を目指し、小から大動物に至る実験を継続し、細胞の種類としては自家活性化髄核細胞や未分化骨髄幹細胞、髄核細胞へ分化誘導を促した幹細胞などを検討してきた。本手法は我々のみならず、海外でも多数追試され細胞移植療法の将来性につき注目されている。しかし動物モデルの限界や構成細胞の発生、分化、運命、脊索性髄核細胞の意義などが未知であり、真の椎間板再生を目指す為には椎間板内の微小環境における細胞レベルでの様々な変化、恒常性維持機構を解明する必要がある。 ヒト検体を用いた臨床研究の検討の結果、我々は髄核細胞の"heterogeneity"とその特色を明らかにした。また椎間板内における組織内在性幹細胞とそのニッチにつき解析、椎間板内在性幹細胞やその未分化度、活性度について年齢と負の相関関係にあることを実証した。これは椎間板再生により適した細胞集団の選択に役立つものと考える。さらに他臓器では骨髄などの幹細胞プールより細胞が"mobilize"してくるが、椎間板においてそのような機構が存在するかにつき、GFPキメラマウスを用いて解析した。その結果、骨髄から"mobilize"する細胞は終板付近には多く認められるが、線維輪、髄核と中心部に行くに従い減少し、椎間板には幹細胞プールからの細胞供給が極端に少なく、このことは外来から細胞を補充することの妥当性を示した。 椎間板における細胞移植療法の臨床応用化にむけた一連の研究の結果、椎間板における細胞レベルでの微小環境をより理解し、さらに質の高い治療法の探索へと椎間板再生研究は進んでいる。今後、多くのことが明らかになるにつれて椎間板障害の予防、治療に応用できると考える。
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