研究概要 |
平成20年度、神経因性疼痛モデルラット(Seltzer model)を用い、神経因性疼痛によるATN-ACCシナプスにおけるシナプス伝達効率(synaptic efficacy)ならびに短期シナプス可塑性(short-term plasticity)の変化の評価を行った。短期シナプス可塑性に関しては、二連刺激による変化(paired-pulse response)を評価した。また、これらの変化を、ホルマリン注入による急性疼痛モデルにおける変化とも比較した。神経因性疼痛モデルラットは、1. Naive controlと比して有意にシナプス伝達効率を抑制した。2. Paired-pulse responseは変化せず、ATNにおける神経伝達物質の量的な変化(presynaptic)ではなくACC神経細胞の変化(postsynaptic)が生じていることが示唆された。急性疼痛モデルでは、1. シナプス伝達効率は有意に増強した。2, Paired-pulseresponseは変化せず、ATNにおける神経伝達物質の量的な変化(presynaptic)ではなくACC神経細胞の変化(postsynaptic)が生じていることが示唆された。以上のように、 神経因性疼痛によりACCの抑制が、また急性疼痛によりACCの興奮が生じていることが示唆された。急性疼痛(amptation, imflamation)によりACCの脱分極が生じ、興奮が生じることは、これまでにも報告されており、本実験の結果と矛盾しないと考えられる。一方で、神経因性疼痛によりACCの抑制が生じた理由に関しては、以下が考察される。神経因性疼痛によりACC神経の基本的な活動が亢進しているため、ATNの刺激に対する反応性が低下している可能性がある。また、神経因性疼痛により、ACCにおけるオピオイド作動性の抑制性神経活動が抑制されると言われている。オピオイド受容体の感受性が減弱しているためである。これに伴い、神経因性疼痛による持続的なACCの活動増加が生じ、ATNからの刺激に反応しなくなっている可能性がある。平成21年度の研究により、このようなシナプス伝達の変化の機序が解明されると考えられる。
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