【目的1】ヒトにおける選択的セロトニン受容体拮抗薬(5-HT2A受容体拮抗薬)の鎮痛効果を、ヒート・カプサイシンテストを用いて評価し、これまでの基礎研究と照合する:2008年度に上記目的に沿い健康被験者を対象に、実験を繰り返し施行した。しかし、予想と異なり5-HT2A剤は有意な鎮痛を短期的にもたらす結果を得ることができずに採用を再検討した。その結果、より人間の感情と高次機能に直接作用する甘味剤を材料に用いることとした。【目的2】脳機能画像法[Functional MRI(fMRI)]を用いて、ヒト中枢における5-HT2A受容体拮抗薬の鎮痛機序を大脳・脳幹レベルで解明する:【目的3】上位中枢の痛覚受容・鎮痛系における、5-HT(セロトニン)の役割を明らかにし、急性・慢性疼痛に対する5-HT2A受容体拮抗薬の臨床応用を目指す:2009年度2月に初回fMRI実験、10月に2回目の追加fMRI実験を、京都の国際電信通信研究所(ATR)の援助を受けて施行した。世界初となる氷を用いた痛覚刺激は、申請者である荻野が開発したものであり、自身によって計3日間かけて実施され、事故もなく安全に終了することができた。今回、人間を対象にした極めて実際的な研究であり、その結果(蔗糖誘発鎮痛のメカニズムが脳内事象であること)はすぐ臨床現場につながることとなり、社会的影響も大きいことが予想されるので、倫理面・安全面には細心の注意を払って実験の実施に努めた。そのため、研究解析、手順に関しては現在考えられ得る最高の環境で実験に臨むことができた。 現在、以上の研究結果は英国神経科学誌NeuroReportにおいて印刷中(in press)である。
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