中枢性疼痛に対しては特に有効とされる薬物が無く、鎮痛効果を確かめる目的で局所麻酔薬をはじめとして多くの薬物が試験的に用いられているのが現状である。そこで中枢神経痛およびこれに関与する交感神経に対する局所麻酔薬の効果を検討する目的で、局所麻酔薬素の血管から脳内への移行および脳内の薬物動態を検討した。局所麻酔薬として、リドカイン、ブピバカインおよびブピバカインの一方の光学異性体であるレボブピバカインを用いた。覚醒状態のラットを用い、マイクロダイアライシス法を用いて血中および脳細胞外液中のブピバカイン、レボブピバカインの濃度を測定し、これらの薬物動態を短時間作用型局所麻酔薬であるリドカインと比較検討した。3種類の局所麻酔薬は2時間にわたって持続投与し、その後2時間にわたって血液および脳灌流液の採取を行った。実験中は血圧・心拍数および血液ガスを一定に保った。その結果、ブピバカイン、レボブピバカインとも血中濃度はほぼ等しく、蛋白結合はリドカインよりも高い約80%であった。リドカイン、ブピバカインの脳細胞外液中の濃度は血中の蛋白非結合分画とほぼ等しかったが、レボブピバカインはブピバカインよりも低かった。これはブピバカインの血液中から脳への移行がレボブピバカインに比べて高く、ブピバカインはレボブピバカインに比べて中枢神経に対する作用がより強力であることが示唆された。またブピバカインによる血圧上昇が認められなかったことから、これらの局所麻酔薬は、低用量では交感神経作用は少ないと考えられた。
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