近年、臓器移植や造血幹細胞移植後にカルシニューリン阻害薬が誘因と考えられる疼痛症候群(calcineurin-inhibitor induced pain syndrome ; CIPS)が相次いで報告され、また、脊髄損傷に対する神経幹細胞移植後にもアロディニアと呼ばれる難治性疼痛が惹起されることも知られている。申請者はマウスを用いた薬理モデルにより、シクロスポリン投与により痛みに対する感受性が上昇することを見出した。さらに、シクロスポリンの投与が不安行動の増加や社会行動減少をきたすという実験結果を得ていることから、カルシニューリン阻害薬の副作用として知られる「うつ」や「不安」などの精神神経症状が痛みの感受性を修飾している可能性が大きいと推測された。したがって、今後はさらにベットサイドでもアプローチ可能な簡便かつ客観的な痛みの評価系を確立し、臨床に即した解析方法を模索していきたいと考えている。
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