硬膜外麻酔のための穿刺針の安全性を高めることが目標であり、その実現のために、穿刺している周辺組織の情報を可視化できる針を開発することを本研究の目的とする。今年度は、インピーダンスアナライザを試用し、組織を洗濯はさみ型電極で計測した結果、脂肪、筋肉、黄色靭帯について、1Hzと100kHzのインピーダンスに顕著な差を見出した。また、硬膜外麻酔針の内針と同径の内視鏡が開発されたことを見つけ、メーカーとの共同実験の約束をし、麻酔下のブタを対象に内視鏡を挿入した針で穿刺をおこなう準備ができた。しかし、当初計画であった超音波の細径探触子であるが、生産中止との情報を得たので方針変更した。一方、穿刺対象の組織の種類を明確にするため、ブタの組織を対象にホルマリン固定して染色する方法を習得した。また、ブタ骨を使用した穿刺抵抗に関する基礎実験をおこない、穿刺速度の影響、硬膜外針の曲がりの影響を注射針との比較で検討した。その結果、0.4mm/sと2mm/sの間に有意な差はなく穿刺抵抗に依存する手技の困難性が明確となった。一方で注射針では有意に穿刺抵抗と黄色靭帯の変形が減少し、可視化する針の針先形状に関する知見が得照れた。以上の結果を踏まえ、新しい針を開発していく上で、インピーダンス計測が有望であるとの判断から、既存の針を詳細に調査し、神経刺激電極針の改造が有用と考え、次年度にはインピーダンスアナライザにて計測可能な形の針を試作する計画を立てた。
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