当初ラットの腸間膜動脈を用いて等尺性収縮力と膜電位測定の同時測定を検討したが、等尺性収縮力測定装置が故障し、利用できなくなった。そこで、収縮力測定に変えてビデオ画像から直径を測定するダイアムトラックシステムを用いた血管収縮測定に変更した。しかしラットの腸間膜動脈の直径はこのシステムでは測定できなかったので、腸間膜動脈より末梢の小腸粘膜下層細動脈を標的にした。またこのシステムでは粘膜を剥して細動脈を露出させる必要があるが、ラットではこの標本が極めて作りにくい上にガラス電極を細動脈に刺入し、安定して膜電位を記録し続けることができなかった。そこでモルモットにおいて検討したところ、標本の作製とガラス微小電極による膜電位の安定した測定に問題がないことが分かった。細動脈は腸間膜動脈よりも体血圧への寄与が大きいので実験の目的により適うと判断し、モルモット小腸粘膜下層細動脈での検討を行った。静止膜電位はコントロールでは-75±4mV、LPS投与群-73±7mVで有意差はなかった。塩化バリウム(0.5mM)を投与すると膜は脱分極し、収縮を起した。塩化バリウム存在下での膜電位、血管径変化量はともに有意差はなかった。アセチルコリン(ACh)を投与するとコントロールでは15.1±2mV過分極し、10±1.0μm弛緩した。一方LPS投与群ではACh投与により11.2±2mV過分極し、8±2μm弛緩した。この過分極は内皮細胞上にある二種類の細胞内カルシウム依存性カリウムイオンチャネルを介するものであることがわかっているが、どちらのチャネルも同程度抑制されて過分極反応を抑えていると考えられた。以上の結果からモルモット小腸粘膜下細動脈では、エンドトキシンによる静止膜電位の変化は少ないが、内皮細胞依存性弛緩反応が障害を受けている可能性が示唆された。
|