研究概要 |
これまでの研究の成果として、蛋白フリーの灌流液を用いた4種類のアミド型局所麻酔薬(メビバカイン、リドカイン、ロビバカイン、ブピバカイン)の胎盤移行性の比較とこれらの胎盤移行性に対する母体側および胎児側それぞれにおけるアシドーシスの影響をまとめた論文がJournal of anesthesiaに掲載された。この研究結果により、局所麻酔薬の胎盤移行性には、pKaで規定される非イオン化型の割合が、大きく影響することがより明らかとなった。ただし、従来考えられてきた母児でのpH較差(pH-gap)では当初予想したほどの有意な胎盤移行性の増加はみられなかった。その後、各局所麻酔薬の蛋白結合率とアシドーシスの影響を調査するための研究として蛋白結合率が異なる2種類の局所麻酔薬(リドカイン、ロピバカイン)の胎盤移行性について実験を行ってきた。アルブミン製剤、FFPを灌流液として、蛋白結合(局所麻酔薬が高い結合性を持つとされるα1-acid glycoproteinがFFPには含有)および、灌流液のpH変化(アシドーシスのステージを作成)に焦点を当てたプロトコールで実験に取り組んできた。しかし、得られる胎盤数の問題と、作成するべきモデルの難易度上昇により、失敗例も含めより多くの時間が必要であることがわかった。つまり、蛋白含有の灌流液(アルブミン,FFP)はそれまでの蛋白フリーのものと比較して、潅流液として粘性が高いためか、実験中に胎児側毛細血管の目詰まりを生じやすい傾向があり、胎児静脈側のサンプル液の回収が可能な成功モデルの作成にはさらに高度なモデル作成技術が必要なことがわかった。残念ながら、未だ論文として報告できるサンプル数に達していないが、現在も粘り強く取り組んでいる。また、並行して行ってきた揮発性麻酔薬の胎盤移行性に関する研究に関しては、データの収集作業がほぼ完了し、論文作成中である。
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