研究概要 |
前立腺癌細胞に対するメバロン酸経路をターゲットとした治療戦略に関する基礎研究を継続して行った。昨年度はゾレドロン酸による抗腫瘍効果とスタチンの抗腫瘍効果の相乗効果を検討したが、本年度は引き続き、スタチンの抗腫瘍効果を中心に、メバロン酸経路の関与を検討した。 スタチンは各種スタチンを使用して前立腺癌細胞LNCAP,PC-3に対する効果をMTSアッセイによって検討した。いずれのスタチンによっても、LDL受容体の変化を認め、特にLNCAP細胞では通常のスタチンの標的細胞と同様にLDL受容体のup-regulationが認められた。一方、PC-3細胞ではLDL受容体の制御機構が破綻しているようであり、スタチン投与によっても、変化がなかった。この結果を反映して、LNCAPはスタチンによる抗腫瘍効果がPC-3細胞と比較して弱いことが判明した。 さらに、スクアレン合成酵素に関する検討も行った。メバロン酸経路はコレステロール合成系と、Rhoなどに関する非ステロール系に分けられる。スクアレン合成酵素は、FDFT1という遺伝子でコードされているが、この遺伝子をsiRNAでknock downすることによって、LNCAPおよびPC-3細胞のいずれも細胞増殖が抑制された。 以上の様な検討から、メバロン酸経路は前立腺癌細胞増殖に密接に関係しており、この経路に関係する酵素の阻害、ゾレドロン酸のような外因因子の併用で、新しい前立腺癌治療に結びつく可能性を示唆していると考えた。
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