平成20年度の結果より、In vitroにおける前立腺癌・腎細胞癌に対する効果が確認されたため、平成21年度は細胞形態学的にノスカピンによる同細胞株への影響を確認した。細胞骨格を免疫染色したところ、ノスカピン投与群では細胞分裂時に紡錘糸の運動が阻害され、細胞分裂できずに細胞周期が停止する像が確認され、これまでの報告を裏付けるものであった。FACSを使用して細胞周期を測定したところノスカピン投与24時間にてG2/M期の割合が増加しており、48時間から72時間後にはこれらの細胞分画が減少を示し、hypodioloid (<2N) sub G1の割合が増加しており、これらはDNAのフラグメント化すなわちアポトーシスを誘導しているものと推察された。われわれはこのメカニズムをしらべるためリン酸化Bc12 (pBc12)とBaxの発現について確認した。ノスカピンを投与された細胞ではpBc12の発現がBc12の発現が増強していないにもかかわらず増強しており、Baxの発現も増強していた。これらの変化は、他の微小管阻害剤でも同様に確認されており、ノスカピンにおいても他の微小管阻害剤と同様な機序で細胞周期を抑制し、さらにアポトーシスへと導いていることが示唆された。 平成20年度、21年度の本研究により、これまで化学療法に抵抗性であった腎細胞癌及び前立腺癌においても、ノスカピンによる抗腫瘍効果がある程度期待できると推察された。IC50はやや高めの濃度が必要であると考えられるが、これまでの報告によりノスカピンはマウスに投与しても毒性がないことや、人体に対しても大量投与の報告もあるため、今後臨床応用の可能性も考えていく価値があるものと推察された。
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