大腸菌性尿路バイオフィルム感染症の予防法および治療法の確立を主要な目的として研究を遂行している。 岡山大学病院泌尿器科において、1994年から2007年に尿路感染症から分離された大腸菌828株を対象(1患者1感染)とした。単純性および複雑性尿路感染症からそれぞれ189株および82株の大腸菌が分離された。キノロン耐性大腸菌の分離頻度は10.7%(89/828株)で、単純性・複雑性尿路感染症由来がそれぞれ3.7%(7/189株)・12.8%(82/639株)であった。キノロン耐性群における耐性決定領域のアミノ酸変異(頻度)は、GyrAの83番(100%)と87番(98.7%)、ParCの80番(93.6%)と84番(56.4%)に多く認められた。キノロン耐性大腸菌の分離頻度は年々増加傾向にあり、その動向に留意する必要がある。キノロン耐性群と感受性群でバイオフィルム形成能に有意差を認めなかったが、極めて高いバイオフィルム形成能を示す株がキノロン耐性群の中にあった。 一方、新規in vivo実験モデル系として、IVIS Imaging System(Xenogen社)を使用する実験を開始した。平成20年度には、発光標識大腸菌(Escherichia coli Xen 14)を用い、ラット尿路バイオフィルム感染症モデルの確立を目指して検討した。その結果、バイオフィルムを形成した大腸菌の発光強度の減衰およびIVISでの測定条件に課題があることが明確となった。また、発光標識大腸菌を用い、マウス上行性尿路感染症モデルの確立にも着手した。
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