研究概要 |
前立腺分泌蛋白であるPSP94遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域と発癌遺伝子であるSV40T抗原を用いて作製された前立腺癌マウスモデル(PSP-KIMAP)を用いてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸の前立腺癌に対する抗腫瘍効果につき検討した。ますPSP-KIMAPを交配、継代させ、PCRによるスクリーニングでSV40T抗原が導入されていることを確認し飼育した。一定の週齢ごとにマウスを解剖し、52週齢以降で組織学的に前立腺癌が発症していることが確認できたため、まず52周齢以降のマウスに対し飲水に混入させてバルプロ酸を投与し前立腺癌発症後のバルプロ酸の治療効果を検討した。しかし、コントロール群と比較しても肉眼的にも組織学的にも明らかな腫瘍縮小効果を確認できなかった。飲水に混入するバルプロ酸の濃度を上げるなどしてさらに工夫を試みてみるも、やはり目立った変化は認められなかった。変化が確認できた場合はバルプロ酸投与マウスとコントロールマウスの前立腺組織を用いてバルプロ酸により発現が抑制されるとされている遺伝子(bcl2,VGEFなど)の発現の違いについて免疫組織学的手法などを用いて検討していく予定としていたが、まだその段階に至っておらず、発症前のマウスを用いたバルプロ酸による化学予防の実験にも至っていない。今後さらに実験を繰り返して検討していくこととしている。また、前立腺癌治療で有効とされている去勢にバルプロ酸投与を加えて相乗効果がないかなど、視点を変えて検討していくことも考えている。
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